【ブックレビュー】空の彼方

前回に引き続き、今回もメディアワークス文庫からです。
最近メディアワークス文庫にはまってる気がする。。

さて、今回レビューする本は「空の彼方」。
自分としてはわりと好きなジャンルでした。

 

前回同様に、まずは全体評価から。
80/100でした。

あらすじ
舞台はRPGとかでよくありそうな世界。
レーギス王国の貴族出身の主人公アルは、ある日、自分の意志で家を出て傭兵となる。
傭兵となったアルは必要な装備を揃えるため、先輩に連れられ、小さな防具屋にやってくる。
防具屋「シャイニーテラス」。防具屋の女主人ソラは、客に防具を売るときに3つの約束を交わす。
それは、必ず生きて帰り、自分の見てきたものをソラに話す。というものだった。
ソラは旅人の帰りを”待つ”ことで、旅人の話で世界中を旅するのだ。
そしてアルもまた、約束を交わし旅へ出るのであった。

全体的な感想としては、結構サクサク進む感じがしました。
「アルが旅立つ→帰る→報告→旅立つ」の繰り返しです。
旅立ち、帰るまでの間の話はありません。
ないこともないですが、その間に「シャイニーテラス」に訪れた客と、ソラとの会話くらいです。
まぁ旅中のアルの話を入れてしまうと、アルがソラに旅の話をする場面がなくなってしまうわけですが。。

世界観は読みはじめて10分程度もあれば大体つかめると思います。
よくあるRPGとかの王国。
国の周りには山などが広がり、傭兵は依頼で素材を集めたり、護衛の任務についたりしている、みたいな世界観です。
しかし、単語だけで世界を広げている感じは否めませんでした。
各所の説明はなく、言葉を出すだけでどういった場所なのかはわかりません。
第2巻以降で何らかあるのかもしれませんが、第1巻のみでは全くわかりませんでした。

主人公はソラなのか、アルなのかその両方なのか。。
物語全体としてはソラを中心として進んでいきますが、実際に旅立つのはアルです。
心情描写はソラが多い感じがしました。アルの心情描写も少ないわけではありませんが、あまり印象に残らない程度。
一部の話では、王国軍(?)の兵士が1人称視点で描かれていたりもしています。
話によっては主人公が変わり、同じ出来事でも誰に焦点を当てているかで、話の内容も違ってきます。
それでも、主なのはアルの話と、アルとソラとの会話な感じがします。
多くの客を持つ防具屋ということもあるんでしょうね。

ヒーリング x ファンタジー
第1巻では「手に入れる自由とその代償」がテーマのようです。
アルは家を出たことで”自由”を得て、代償として”貴族の生活”を失います。
かごの中の鳥は餌のことや、天敵など何一つ心配することはないが、自由を持たない。
脱走すれば自由が手に入るが、代償として不安を持つ。
ソラの「自由と代償」も物語の出てきて、1巻を通じて何かを考えさせられます。
RPGのようなファンタジーの世界は、いつも理想郷で困っても簡単に解決できてしまいそうな錯覚があります。
しかし、そんなファンタジーの世界とは全く変わらない世界で「悩みと不安」を抱える主人公たちを描きます。
身近な悩みではないものですが、それが逆に心に響いてくるのかも。

もう一つのテーマ「待つ」を通じて教えられた物事の正しい道
誰でも「待つ」ということをしたことがあるはずです。
身近なテーマも扱っていますね。
ソラの中では「旅する=行く」ではなく、「待つ」ことも一つの旅なのです。
ソラが聞きたいのは、結果ではなく旅人が「そこで何を見たのか」です。
そう、それこそがソラの言う旅というものです。
あとがきでは「待つ」がテーマだ。という感じの書き方をしているように思います足りていないが、
僕の中では「すべての物事には、”これが正しい”というものはない」というのがテーマだと思いました。
それはソラの「旅=待つ」もまた同じ事です。

総評
・世界観が馴染みやすく読みやすい
・話はサクサクとテンポよく進む
・全体のまとまりが良かった(最初で貼った伏線は最後で回収した)
・間接的に考えさせられることがある
・単語のみで世界観を広げているせいか、狭く感じてしまう
・重要な部分なのに、文章が足りていない

てことで、自分の中では80/100となりました。


BGM:さよならありがとう/小林幸子

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