【ブックレビュー】塩の街(有川浩)

世界が終わる瞬間まで、人々は恋をしていた―

久々のブックレビューで、レビューを書きたい作品は色々溜まっていますが、今回はその中でも特にオススメしたい一冊です。
有川浩 作、「塩の街」です。

 

「塩の街」は、
「図書館戦争」、「植物図鑑」、「空の中」、「海の底」、「シアター!」、「フリーター、家を買う。」
などの人気作品を執筆されてきた有川先生のデビュー作です。

角川文庫版を買ったはいいものの、2年くらい放置の末、やっと読めました。
全体評価としては87/100でした。
すっごく面白かったです。
いつも本は休憩を入れながら読むのですが、この本はほぼノンストップで夢中で読みました

あらすじ
地球に飛来した巨大な塩化ナトリウムの欠片。飛来の瞬間、世界中では人々が塩の塊となって死亡する”塩害”が発生した。塩害は感染症のように広がり、塩害被害者は増加の一途を辿る。日本も例外ではなく、政府関係者も塩害被害により減少、政府は壊滅状態にあった。物資などは配給制になり、生き残った人々は何とか生活をしていた。生き残った人々の中に、行動を共にする女子高生と元自衛官がいた。世界が正常であったなら出会うことのなかった2人。ある日、その2人の前に一人の男が現れる。その男の訪問は2人の関係と、世界を大きく変えることとなる。


あらすじだけ読めば、SF物っぽく感じると思います。

実際、僕も最初はSF物だと思っていました
しばらく読んでるうちに、「あれ?何か思ってたのと違う」と感じ始めました。

 

読んだ後の感想:「糖尿病になるくらいのベタ甘なラブストーリーやん!!」
結論から言えば、ラブストーリーです。しかも甘いです。甘すぎます。

主人公は二人。
塩害発生当時、女子高生だった真奈
元自衛官の、秋庭

総ての章において、恋人や家族などの”愛すべき存在“が出てきます。
立場は違えど、塩害による被害を被った人、その恋人などが中心となって物語は進んでいきます。
1,2章は導入部分で、主人公二人(真奈と秋庭)が中心にはなりません。
中心となるのは、それぞれ”事情”を持った人物で、主人公二人との出会いはありますが、話の中心はそれぞれの人物の”事情”。
主人公二人が中心となるのは3章以降です。

3章では塩害発生時から、真奈と秋庭の出会いが書かれています。
塩害により狂ってしまった世界は、女子高生と自衛官という正常な世界では交わらないはずの二人を交えます。
真奈は両親を失い、変えるところも失い、貞操までも奪われようとしていたところに秋庭に助けだされます。
それ以降、秋庭と真奈は行動を一緒にすることとなり、1,2章などがあった後、4章へと続きます。

4,5,6章は連続した話。
4章ではある人物の訪問、5,6章で終劇になります。
ある人物の訪問で、真奈と秋庭、そして世界の運命は大きく変わり、物語は終りを迎えます。
色々あって運命が変わった世界は救われ、短編集「塩の街、その後」へ続きます

「塩の街、その後」は、真奈と秋庭のその後、登場人物のその後、が書かれます。
「塩の街」の最後の終わりは、さっぱりと終わり、物足りない印象を受けました。
しかし、「塩の街、その後」が続編のような扱いとなり、最後は上手くまとまっていたと思います。


<全体的な感想>

読めば読むほど引き込まれる世界観と、個性豊かな登場人物が素敵。
“人間の弱いところ”と、”誰かを守る強いところ”、その両方が書かれていた。
あらすじを読めば物語の中心は”塩害”にあるのかと思ったけど、そうではなく、”塩害”はあくまでも一つの要素でしかなかった。
“塩害”は、幾つかの要素の中で”世界”を作るために必要だっただけに過ぎないと思った。
いわゆる“世界を救う”系の物語は、”世界を救う”ことに中心を置くことが多いが、「塩の街」は中心が”愛”や”恋”であって、アプローチの仕方が面白いと感じた。
「塩の街、その後」は真奈と秋庭のその後など、読者としても気になる点を付いていた。
また「塩の街、その後」において、真奈と秋庭と関係のない”第三者、俯瞰者”を置き、最後にその”第三者”を使い物語の総括をしていたのは面白いと思った。
あと、「塩の街」の最後のF-14の挿絵の位置がバッチリすぎてびっくりした。

<悪いと思ったところ>
世界観が壮大過ぎて、この話の量では語り付くせていない
もっと他の国や場所、時間などを見せて欲しかった。
有川先生お得意の、自衛隊作品だったので自衛隊の活躍に期待したけど、あまり活躍しなかった。
実質活躍したのは数人、書かれてないだけで実は活躍してるのかもしれないけど。
しかも、一番重要であるはずの”世界を救う”というシーンがカットされていたりします。
出来れば書いて欲しかったなぁと思いました。
あと、戦闘機などの詳しい解説とかも期待していたけど、なかったのがちょっと残念。

 

純粋なラブストーリーというわけではないですが、ベタベタなラブストーリーです。
でも、ラブストーリー嫌いな私が読んでて、結構さらっと読めるのが不思議なところ。
同著者の「図書館戦争」などと比べてれば、自衛隊などの活躍はなくミリタリー好きな方は不満かもしれません。
それでも一度読む価値はあると思います。
文庫であれば700円程度で購入できますし、有川先生を知ってもらう一冊としても良いと思います。

「塩の街」を面白いと思われた方は、ぜひ他の有川先生の作品も読んでみてください。
ちなみに、「図書館戦争」と「植物図鑑」は私のオススメです。

ではでは今回はこの辺りで。

塩の街

塩の街
著者:有川浩
価格:700円(税込、送料込)
楽天ブックスで詳細を見る

img style=”margin: 0px; padding: 0px;” src=”http://hbb.afl.rakuten.co.jp/hgb/?pc=http%3a%2f%2fthumbnail.image.rakuten.co.jp%2f%400_mall%2fbook%2fcabinet%2f0438%2f04389803.jpg%3f_ex%3d400x400

コメントを残す

Your email address will not be published / Required fields are marked *